性同一性障害GID

性同一性障害とその現状

性同一性障害gender identity disorder (GID)は、心の性別と身体の性別が一致しないために苦悩している状態です。

その状態を改善するために、心が重視され、身体の性を変え、心の性別に近づける治療が行われます。

 

治療法としては、主にホルモン療法から始まり、手術療法および性適合手術sex reassignment surgery(SRS)がという順に進められることが多いです。
初めてSRSが行われたのは、1998年に埼玉医大で行われました。それ以来GIDに関する治療が徐々に認知されるようになりました。


「性同一性障害の性別の取扱いの特例に関する法律(特例法)」が2004年7月から施行され、一定の条件のもとで戸籍の性別変更が可能となったことは大きな前進といえるでしょう。


この経緯が考慮され、日本精神神経学会では、「性同一性障害の診断と治療のガイドライン(第3版)」において、身体的治療として、ホルモン療法、乳房切除術およびSRSは順序に関係なく、いずれの治療法を選択することが可能となりました。


また、最新ガイドライン(第4版))では、思春期(15歳から18歳未満)に入って、性別に違和感がある場合には二次性徴抑制ホルモンの有用性が指摘され、その実施について新たに追加されました。

 

このような身体的治療は、生活の質を改善し、自分らしく生きるための手段であり、目的ではありません。医療現場では、当事者の自己決定と自己責任を最大限に尊重しながら、治療を進めることが大切です。


GID(性同一性障害)学会認定医は、診療を通して性同一性障害当事者の福祉に貢献します。また,GID、トランスジェンダー当事者の抱えるいろいろなの課題に対して、自ら支援するとともに、社会に対して啓発,情報提供を行っています。

GID(性同一性障害)学会認定医 五十音順

北海道

池田 官司
北海道文教大学人間科学部作業療法学科

市原 浩司
札幌中央病院

舛森 直哉
札幌医科大学 泌尿器科

千葉

あべメンタルクリニック
阿部 輝夫

埼玉

石原 理
埼玉医科大学 産科婦人科学

内島 豊
赤心クリニック泌尿器科

東京

大谷 伸久
自由が丘MCクリニック

針間 克己
はりまメンタルクリニック

松永 千秋
ちあきクリニック

三原 誠
JR東京総合病院 リンパ外科・再建外科

森井 智美
昭和大学附属烏山病院


山梨

百澤 明
山梨大学医学部附属病院 形成外科

兵庫

木下 真也
大阪医科大学神経精神医学教室

康 純
大阪医科大学総合医学講座 神経精神医学講座

齋藤 利和
幹メンタルクリニック

丹羽 幸司
ナグモクリニック大阪

織田 裕行
関西医科大学総合医療センター 精神神経科

愛知

松尾 かずな
名古屋大学医学部附属病院 泌尿器科

山口 悟
ナグモクリニック名古屋

広島

杉本 盛人
尾道市立市民病院 泌尿器科


岡山

佐藤 俊樹
さとうクリニック

中塚 幹也、難波 祐三郎、松本 洋輔
岡山大学病院ジェンダーセンター

鹿児島

内田 洋介
高田病院 泌尿器科

沖縄

今泉 督
沖縄県立中部病院 形成外科

山本 和儀
山本クリニック

●事例1 性同一性障害gidに対する不適切な取扱い事案

医師に性同一性障害と診断されているが、戸籍上は女性であるFTMの事例
職場において男性用更衣室等を使用させてもらえず、精神的苦痛を受けているとの申告を受け,調査を開始した事案である。


事情を確認するため,法務省が被害者の職場の上司と面談したところ,その職場の上司は,被害者から本件申告と同じ趣旨の相談を受けていた。


その当事者とはと十分なコミュニケーションが取れていない状況がだったため、,そのことを指摘したところ,その当事者の上司はできるだけの対応をしたいとの意向を示した。


その後,職場における対話が促され,その当事者は職場の男性用施設の利用ができるようになった。

 

●事例2 性同一性障害gidに対する採用試験における不適切な取扱い事案

採用試験において,性同一性障害者gidに対する不適切な質問があるとの申告を受け,調査を開始した事案である。


専門家からの事情聴取を行うなどして検討したところ,当該質問を含む試験を実施するに当たっては,性同一性障害者gidに対する配慮が必要と認められた。


その旨を当該試験を実施した者に伝えたところ,翌年度において,採用試験全体の見直しを検討する中で,当該質問項目についても改善の適否を検討するとの説明を受けた。そして,翌年度の採用試験において,当該質問は性同一性障害gidに配慮した方法で実施された。

 

続きを読む≫ 2016/12/07 21:35:07 GIDの資料室

性同一性障害gidの生殖医療について

 

多くの性同一性障害GID/MTF・FTM、性別違和の人たちが、 将来、もしかして、子どもを持ちたいと思うかもしれません。

 

ホルモン治療や性適合手術(SRS)を受けたのちに、自分と遺伝的につながりのある子どもを持つのが不可能になったことを悔やむ場合もあることも知られています。

 

たとえ当事者が治療を始めるときに生殖能力の問題に興味を持っていないとしても、こうした問題が後になって持ち上がるかもしれません。、また当事者が若い場合にはなおさら自分とは関係のない問題と思うかもしれません。

 

女性化、男性化を促すホルモン治療、生殖器官を切除する手術をすると、生殖能力がなくなるため、ホルモン治療前や、生殖線(睾丸、卵巣)を切除する手術を開始する前に、生殖能力について当事者が自ら決定することが望ましいといえます。

 

医療機関などの医師と将来の生殖についての選択肢を早めに話し合うことが望まれますが、常に可能な訳ではありません。もし、ある当事者が性別適合手術(SRS)をまだ行っていなければ、ホルモン治療を長期に中断することで、元の性のホルモンに回復させてから、精子もしくは卵子を産生することが可能になるかもしれません。

 

性別違和に対して様々な医学的治療を受けている個々人の生殖の問題について、生殖に関する論議や意見を述べた論文を除くと、研究論文はほとんど報告されていません。

 

生殖機能を温存する必要に直面している別の人たち、例えば、がんのため、生殖腺(卵巣、精巣)を切除しなければならない人たち、生殖機能を損傷する放射線療法や化学療法を受ける人たちの例があります。


こうした人たちから得られる情報が、性同一性障害(GID)のために、今後治療を受ける人々にも応用可能となるかもしれません。

続きを読む≫ 2016/08/10 22:51:10

MTFの精子の保存については、、特にまだ子どものいない人は、ホルモン治療の開始前に精子を保存する選択肢があります。

 

女性ホルモン治療後でも、高濃度のエストロゲンにさらされた精巣を検討した研究によると、エストロゲンを中止することにより、精巣機能が回復する可能性もあるようです。

 

精子の回収はホルモン治療の開始する前、もしくは女性ホルモン治療の中止後に、精子の数が再び増えてから行われるべきです。精子の質があまりよくない場合に場合には、凍結保存が話し合われるべきでしょう。


無精子症の成人では、精子回収のため精巣生検後の凍結保存が可能ですが、必ずしも成功するわけではありません。

続きを読む≫ 2016/08/10 22:46:10

FTMの生殖に関する選択肢は、未受精卵子または、受精卵を凍結する方法があります。
凍結配偶子と受精卵は、後に代理母(FTMの妻など)によって妊娠に用いることができます。


その他に、精子をどこから供給するかという問題もあるかと思います。FTM本人は、無理ですから、どうしても自分の遺伝を持っている、兄弟なども考えられます。

 

男性ホルモン治療を始めても、卵巣は回復するのかという問題ですが、これは、多嚢胞性卵巣症候群の女性における研究が参考になるかもしれません。

 

卵巣が高濃度のテストステロンにさらされても、短期間であればテストステロンを中止することにより、卵巣は卵子を作れることが可能になり、十分に卵巣機能が回復する報告もあります。

 

ただ、それは当事者FTMの年齢とテストステロン治療していた期間によります。研究がなされたわけではありませんが、テストステロン投与後にそれを中止したFTMのいくつかの例で、妊娠と挙児が得られている例があります。

 

FTMの生殖のための選択は、いかなる場合も、否定されるべきではありません。生殖に関する選択肢があるものの、これらの技術はどこででも利用可能なわけではなく、非常に高額になることもあります。実際に行ってくれる医療施設が少ないのが実情かもしれません。

 

本来の生殖機能が発育していない子どもたちの場合は例外になります。現時点では、このようなケースの場合、性腺機能を温存する技術はありません。

続きを読む≫ 2016/08/10 22:36:10

胸オペのメリット


FTMの当事者は、男性ホルモンを注射していくと外見は男性化し、パス度はかなり高くなります。

ところが、顔は男性なのに、どうしてもしっくりこないところが乳房です。


多くの場合は、膨らみを隠すためナベシャツを着ます。

根本的には、これで平らにすることができません。

やはり、胸はどうしても気になる場所の1つと言えるでしょう。



解決方法は、胸オペ(手術をして乳腺を摘出))をするしかありません。

乳房は、ほとんどが脂肪だと思い込んでいる方もいて、脂肪吸引をすれば無くなると考えている方がいます。



小さい場合でも、脂肪吸引だけでは、絶対平らになりません。
また、大きい場合は、脂肪の割合が多いのですが、脂肪吸引では改善されないので注意してください。

美容外科などで、脂肪吸引のみをされて、平らにならない!ということにならないようにしてください。
たまに脂肪吸引をしたのだけど、平らにならない・・・という相談を受けます。


胸オペは早ければ早いほど手術した方がよいか?

たいていのFTMに人たちは、胸をナベシャツで隠しますが、確かに洋服の上からはわかりません。ただし、ナベシャツを長い年数装着していると、胸の皮膚が伸びて下垂が進みます。

そのため、皮膚にたるみが生じてしまうと、いざ手術方法を選択する際に、、キズの一番小さい方法(乳輪辺縁の下半周を切開する;U字切開)が選択できなくなります。

夫が、「性同一性障害・GIDの性別の取扱いの特例に関する法律」(特例法)にもとずき、婚姻前に女性から男性への性別取扱変更審判を受けた者ケース。


自然妊娠が望めないため、妻が夫との婚姻中に人工授精によって妊娠し、子を出産したケースにおいて、子の戸籍上の「父」欄が空欄となっているのはおかしいとして、戸籍訂正許可申立をした事件において、最高裁平成25年12月10日は、「父」欄に夫と記載する旨の戸籍訂正を許可する決定をしました。


性同一性障害の性別の取扱いの特例に関する法律は、平成15年に成立した法律ですが、生物学的な性別と心理的な性別が一致せず、他の性別であることについて持続的な確信を持っており、2人以上の医師の診断が一致している等の性同一性障害・GIDについて、性別取扱変更審判がなされると、民法その他の法令の適用について他の性別に変わったものとみなしています。(特例法4条1項)

 

この点、民法は、夫との婚姻中に懐胎した子は夫の子と推定する、いわゆる嫡出推定規定(民法722条)を設けていますが、判例上は、妻がその子を懐胎すべき時期に夫が服役しているとか、夫婦が事実上の離婚をしていて夫婦の実態が失われていた等の事情が存在する場合には、同条の推定を受けないとする判断がされてきました。

 

本判決(東京高裁平成24.12.26)も、夫と妻との間の血縁関係が存在しないことが明らかな場合においては、民法722条を適用する前提を欠くとして戸籍変更申立を却下していました。

 

これに対して、最高裁は、「一方で性別取扱変更の審判を受けた者に婚姻することを認めながら、他方でその主要な効果である民法722条の適用を認めないことは相当ではない」として原決定を破棄しました。


日本産婦人科学会によれば、日本では1948年からドナー精子の提供を受けて母体への子宮腔へ注入する人工授精(非配偶者間人工授精AID:Artificaial Isemination of Donor)が行われています


最近では、体外に受精させた受精卵を子宮腔へ注入する体外受精の医療技術が進歩し、精子だけでなく卵子や杯の提供も技術的には可能となっており、様々な問題に法整備が追いつかず未解決で残されているのが現状となっています。

本判決は、こういった未解決だった問題のひとつについて結論をだしたものと言えます。

続きを読む≫ 2016/06/03 17:51:03

第2版ガイドライン以降のホルモン治療については、18歳未満についての記載がなりませんでしたが、現行の第4版ガイドラインでは18歳未満の対処方法、二次性徴抑制ホルモン治療の項目が追加されました。Tanner2期以上の二次性徴発来に違和感があるものに適応します。治療に際しては、年齢、既往歴、家族歴などを問診により把握し、患者の状態により量、注射する頻度を決めるとされます。

 

MTF、FTMともに男女の性腺機能低下の際に行う治療に準じ、ホルモン基準値を超えないように治療していくことが重要です。
開始後は、定期的な血液検査が必要です。

女性ホルモンの種類には、、注射薬、経口薬、経皮薬があります。
筋肉注射が主な治療となります。経口薬、経皮薬は、補助的な治療となります。

GIDの診断を受けずに自己判断で経口ホルモン剤の個人輸入を行い、内服しているひとも多くいます。1日の許容量を超えて内服している場合には一旦中止し、医師管理下にホルモン治療を開始することが大切です。

 

重大な副作用は、静脈血栓症で、リスクが高いときや疑う症状が認められるときには、血液凝固系検査(ATV、D-dimerなど)を測定します。その他に、心血管系疾患、プロラクチノーマにも注意が必要です。

経口薬は、静脈血栓症、肝機能の悪化の発生頻度が高いとされます。特にエチニルエストラジオール(プロセキソール)は、ゴナドトロピン抑制作用が強く、高頻度に静脈血栓症を引き起こすとされています。

文部科学省は、心と体が一致しない性同一性障害(GID)や、同性愛者などの性的マイノリティーとされる小中高の自動生徒へのきめ細かな対応を求める通知を全国の教育委員会などに出しています。


それぞれの児童生徒に合った制服の着用を認めるなど、具体的配慮事例も紹介しています。

同省は、今後研修などで周知する方針です。

 

<文科省通知の要旨>

・学校内外にサポートをつくる対応をする
・学校に支援は、医療機関や保護者と連携して進める
・画一的ではなく、一人一人の状況に応じた取り組みを進める
・性的マイノリティーとされる児童生徒の悩みや不安も同様に受け止める

 

2014年文科省が初めて行った実態調査によると、肉体的な性別に違和感を持ち、学校に相談している児童生徒が全国に少なくとも606人在籍していることが判明しています。


 

通知では、性同一性障害の児童生徒には、組織的な支援が重要だとして、学校内外にサポートチームをつくることや、医療機関、保護者との連携を要請しています。他の児童生徒への配慮とのバランスを取りながら、一人一人の状況に応じた取り組みを進める必要があります。


性同一性障害の診断がなくても、支援は可能とし、自認する性別の制服や体操着の着用を認める、多目的トイレの使用を認めるなどの、既に各学校で実施している配慮事例も紹介されています。

 

性的マイノリティーとされる児童生徒についても、同様に悩みや不安を受け、いじめや差別を許さない指導や、教職員自身が心ない言動をしないように求めている。

 

<性同一性障害の児童生徒に対する学校の配慮事例>


服装 自認する性別の制服や体操着の着用を認める
髪形 戸籍上男性の児童生徒には、標準より長い髪形を認める
トイレ 職員トイレや多目的トイレの利用を認める
呼称 通知表などを、児童生徒が希望する呼称で表す
授業 体育、保健体育で別メニューを設定する
水泳 戸籍上男性の児童生徒には、上半身が隠れる水着の着用を認める
修学旅行など 1人部屋の使用を認める。入浴時間をずらす

 

続きを読む≫ 2015/08/25 16:43:25 GIDの資料室